株式会社Y's upの不動産業ブログ

バルコニーは不要??

家にはバルコニー(ベランダ)があるのが当たり前と思っている方は多いかもしれません。
近年、乾燥機や部屋干しができるランドリールームの導入、花粉などの影響で外干しの機会が減り、
バルコニーを作らないケースも増えています。

バルコニーを作らない場合のメリット・デメリットとは?

 

バルコニー不要論の背景に
「コストダウン」「外干し機会減」

バルコニーを作る・作らないは、最近、お客さまとの打ち合わせでもよく議題に上がります。

物価高で建築費用が上昇する中で「どこを削れるか?」と考えたときに、「洗濯物は乾燥機で乾かすので外干しはほとんどしない。

だからバルコニーをなくす」という選択をされる方はいらっしゃいます。

バルコニーの要・不要については、「洗濯物を干すのに必要だから作る」「洗濯物を外干ししないから要らない」といった単純なものではなく、周辺の立地なども含めて「バルコニーがあった方がいいのか、なくてもいいのか」という視点で検討するといいでしょう。

例えば、採光が厳しい立地の場合、2階に光を取り入れるためにバルコニーを作った方がいいケースもあります。

大きな掃き出し窓※1が確保できて室内が明るくなり、空間全体を広く感じられることもあります。

 

バルコニーを作らないメリット・デメリットとは?

バルコニーを作らない場合のメリット

建築費用・メンテナンス費用が節約できる

バルコニーの建築費用がかからないので、総工費が安くなります。また、バルコニーの床の防水メンテナンス(およそ10〜15年に一度必要)や、腰壁がガラス製の場合は飛散防止フィルムの交換(およそ10年に一度必要)といったメンテナンスが不要になります。

掃除の手間が省ける

ほこりや汚れ、落ち葉などがたまりやすいバルコニーは、定期的な床の掃除や排水溝の掃除が必要です。バルコニーがなければその手間が省けます。

鳥のふん害を受けにくい

バルコニーがあると、ハトやカラスの止まり場になってふん害に悩まされることも。バルコニーがなければそうした被害もありません。

防犯面で安心

バルコニーが空き巣侵入の足場になったり、目隠しになったりする場合があります。外干しの洗濯物によって家族構成を推測されることも。バルコニーがなければ防犯面では安心といえるかもしれません。

バルコニーを作らない場合のデメリット

洗濯物や布団を外に干せない

バルコニーがないと、外干しはできません(庭に干す場合を除く)。ただし、乾燥機やランドリールームの導入、共働きの増加、花粉やPM2.5の影響で、外干しがベストとも言えないため、デメリットと感じない方もいるでしょう。

窓が汚れる・窓掃除がしにくい

バルコニーの奥行きで雨風がしのげるので、バルコニーがなければ窓が汚れやすくなります。さらに、足場がないので窓の外側を掃除しにくくなります。

エアコンの室外機の置き場に困る

バルコニーにはエアコンの室外機の置き場としての役割もあります。バルコニーがなく、室外機を地上に設置する場合、長い配管を壁にはわせるので工事費用が高くなり、外観デザインを損なうことも。配管を壁の内部に通す隠蔽配管という方法もありますが、追加工事が必要になり、エアコンの買い替えの際も機種が限られるケースがあります。

また、2階リビングの場合、バルコニーはゴミの一次保管場所にもなるため、バルコニーがないと困ることもあるでしょう。

閉塞感を感じる場合も

バルコニーを作らないと掃き出し窓が作れず、腰高窓※2かFIX窓※3になります。開口部の面積が狭くなる分、採光性が低くなり開放感が感じられない場合も。外の空気を吸ってリフレッシュしたいときなども、気軽に外に出られる場所がないので、閉塞感を感じるかもしれません。

※2腰高窓…成人が立ったときの腰の高さに設置される窓のこと

※3FIX窓…ガラスを窓枠にはめ込んだ開閉できない窓のこと

階下の直射日光がきつくなる

庇やバルコニーの張り出しを使って日射をコントロールする「パッシブデザイン」という設計手法がありますが、バルコニーをなくせば階下にダイレクトに日差しが入るので、暑さが厳しくなります。

プライバシーが守りにくい

バルコニーが張り出すことで、外から室内への視線を適度に遮ることができますが、バルコニーがないと外からの視線は感じやすいかもしれません。

バルコニーを作る・作らないで迷っている方は、メリット・デメリットをしっかりと踏まえた上で判断することをおすすめします。

バルコニー不要派だけじゃない
「ランドリールーム」のすすめ

以前実施した「ベランダ・バルコニーについてのアンケート」で、バルコニーの用途を尋ねたところ、約8割の方が「洗濯物や布団を干している」と回答したことからも分かるように、「バルコニー=洗濯物を干す場所」というイメージは未だ根強いのかもしれません。

そうした中で、バルコニーを作らない選択をした方の間で、洗濯物を部屋干しできるランドリールームを作るケースが近年とても増えています。

「洗う・干す・取り込む・アイロンがけをする・たたむ」が1カ所で行えるランドリールームは、洗濯まわりの家事の効率化を助けてくれます。普段はバルコニーで外干しをしている方も、ランドリールームがあれば雨の日や花粉の時期の部屋干しに重宝しますし、リビングに洗濯物を干さずに済みます。ランドリールームのように「多少散らかったり、生活感が出てもOK」というスペースが家の中にあると、心のゆとりにつながります。

ランドリールームの広さは少なくとも1.5帖、できれば3~4帖あると理想的です。縦長の空間だと両端の壁面収納量が増え、カウンターも設置できて使い勝手が良くなります。除湿器は必須で、備え付けの除湿器を設置したり、既製品を使ったり、浴室・脱衣所・ランドリールームがつながっていれば浴室の扉を開けて浴室乾燥機で乾かす方法もあります。ランドリールームの近くにファミリークローゼットを隣接させることで、家事動線がさらにスムーズになります。ランドリールームはバルコニーの有無を問わず、これから家を建てるすべての方におすすめしたい空間です。

バルコニーを「洗濯物を干す場所」という機能面だけでとらえると、「ランドリールームがあればバルコニーは不要」という結論になるのかもしれません。しかし、バルコニーは建物の「内」と「外」をつなぐ、「内でも外でもない空間」として、暮らしに豊かさをもたらしてくれます。

例えば、カフェで窓際の席に座ったり、温泉の露天風呂で開放感を味わったりするように、屋内にいるときでも外の開放感を求めてしまうことはないでしょうか。バルコニーは五感で自然を感じられる場所。家にいながら気軽に外とつながれるのは、半屋外的空間であるバルコニーならではの魅力です。

洗濯物を干すだけの用途なら、バルコニーの奥行きは90cm程度あれば足りますが、チェアを置いてコーヒーを飲んだり、読書をしたり、プランターを置いてガーデニング楽しむなど、くつろぎの空間として活用するなら1m80cm以上の奥行きが理想です。正方形に近いと使い勝手がいいですが、見晴らしのいい立地なら横長にバルコニーを取るのもアリ。隣家の視線が気になる立地なら腰壁を高めにしてプライベート感のある空間にしたり、眺望のいい場所なら外に開いて開放的にしたりと、立地に合わせて設計できます。

バルコニーを生活空間として取り込む設計のコツは、バルコニーに続く部屋とバルコニーの床の高さをそろえる、バルコニーの軒天と室内の天井を連続させて内外を緩やかにつなぐなどの手法があります。洗濯物を干すためのバルコニーと、くつろぐためのバルコニーを別々に作るのもおすすめです。

まとめ

バルコニーを作る・作らないに正解はありませんが、「コストが浮くし、使用頻度が低いから」という理由だけで作らないことを決めてしまうと、後悔する場合も。バルコニーの使用目的や、作らなかった場合のメリット・デメリットをしっかり検討しましょう。

ゴミ屋敷や引きこもりの背後。。。

ゴミ屋敷や引きこもりの背後に”SOS出せない住宅弱者”。住宅確保・外出サポート・ごはん配達など見守りで使命感もやす 社会福祉法人「悠々会」東京都町田市

 

ファミリーの多い、東京都町田市。土地に高低差あり、高齢者には外出しにくい面も

東京都町田市は、都心へのアクセスが良く、自然も豊かな暮らしやすい街。子育て世帯も多く住んでいます。町田市鶴川を主な事業エリアとして20年以上、住まいの支援活動をしている悠々会の鯨井さんは 「一方で、地形的には多摩丘陵に位置し、坂が多いのも特徴。高齢者にとっては、上り下りがきつく、外出しづらい面もある」と言います。

町田市は東京都と神奈川県の境にあり、新宿・渋谷・横浜などへのアクセスが良好。駅から少し離れると里山の風景が広がり、高低差の大きい坂も多い(画像/町田市)

町田市は東京都と神奈川県の境にあり、新宿・渋谷・横浜などへのアクセスが良好。駅から少し離れると里山の風景が広がり、高低差の大きい坂も多い(画像/町田市)

悠々会は特別養護老人ホームの運営や在宅看護サービスのほか、地元に根ざした福祉活動を続けている社会福祉法人。市の地域包括支援センター(介護保健法で定められた、高齢者をはじめとする地域住民の介護・医療・保健・福祉などの総合相談窓口)の運営業務も受託しています。なかでも鯨井さんが居住支援コーディネーターとして所属する悠々会の共生社会推進室は、地域のお困りごとを解決するための部署です。

買い物や病院への外出支援を行う「モビリティ事業」や、ひとり親世帯に2週間に一度、ごはんを届けつつ見守りを行う「おうちでごはん事業」などを実施。事情があって住まいを確保できずにいる人たちへの住まいの支援(居住支援)にも乗り出しています。

「町田市支え合い交通事業」の一環として鶴川団地で始まった悠々会のモビリティ事業は、外出が困難な高齢者などを限られたエリア内で送迎するサービス(画像提供/悠々会)

「町田市支え合い交通事業」の一環として鶴川団地で始まった悠々会のモビリティ事業は、外出が困難な高齢者などを限られたエリア内で送迎するサービス(画像提供/悠々会)

外出に支援が必要な人は「FREEMO(フリモ)」として30分500円の運賃(別途、乗車カード発行手数料として3000円)で乗り合いサービスを利用できる(画像提供/悠々会)

外出に支援が必要な人は「FREEMO(フリモ)」として30分500円の運賃(別途、乗車カード発行手数料として3000円)で乗り合いサービスを利用できる(画像提供/悠々会)

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「声に出せないSOSに応えたい」と始めた、住まいの支援

そもそも居住支援の必要性を感じるようになったのは20年ほど前のこと。当時、民生児童委員をしていた悠々会の理事長、陶山慎治(すやま・しんじ)さんが地域包括支援センター業務の一環で、生活保護受給者や高齢者の家に行ったとき、扉を開けると中はゴミ屋敷になっていることが度々ありました。外部とつながるすべを持たずに引きこもる人が多く、助けを求めるSOSの声の上げ方を知らずにいたのです。

陶山さんは「もっと早く気づいていたら、こんなことにならなかったのでは……」と思いながら、社会福祉の業務からは、なかなか住まいの支援につなげられません。身元保証人や緊急連絡先がなかったり、高齢のために孤独死や認知症の発症などによるトラブルを懸念する管理会社やオーナーから賃貸借契約の更新をしてもらえなかったりするケースも。陶山さんは「行政や不動産会社ともっとつながる必要がある」との思いを強くしたそうです。
そしていざ、本気で居住支援に取り組もうという機運が高まったのは2016年ごろになってから。

「高齢や身元保証人や緊急連絡先がないために、『賃貸契約を更新してもらえない』『立ち退かなくてはならない』という話をそれまでにも増して多く聞かれるようになりました。このことについて問題意識を持ち続けてきた陶山が所有していた不動産を活用して貸し出せないかと考えたのがきっかけです」(鯨井さん、以下同)

悠々会では地域の運営組織と連携して、イベントの手伝いをするなど、地域に根ざした福祉を目指して活動している(画像提供/悠々会)

悠々会では地域の運営組織と連携して、イベントの手伝いをするなど、地域に根ざした福祉を目指して活動している(画像提供/悠々会)

オーナーから1部屋ごとに賃貸物件を借り上げ、サブリース

悠々会が実施する「あんしん住宅事業」は、住まいに困っている人から要望などを細かにヒアリングした上で、不動産会社に要件を伝え、オーナーから悠々会が入居希望者に合う物件を直接借り上げてサブリース、つまり入居希望者に転貸するというもの。オーナーへの家賃支払いの責任を負うのは悠々会となり、入居者は悠々会に対して毎月の支払いをします。町田市の賃貸物件の3~4割が空室といわれるなか、悠々会が借り上げて入居に関する責任を持つことで、オーナーは空室が減り、家賃滞納や入居者の孤独死などの心配を軽減できます。この仕組みによって、これまで賃貸物件を借りることが難しかった人たちにも貸すことができるようになりました。

相談者の希望にあった物件を一緒に探し、悠々会がオーナーから直接借り受け(マスターリース)して、入居を希望する人に転貸(サブリース)する(資料提供/悠々会)

相談者の希望にあった物件を一緒に探し、悠々会がオーナーから直接借り受け(マスターリース)して、入居を希望する人に転貸(サブリース)する(資料提供/悠々会)

入居者にとっては、一緒になって住まい探しをしてくれる人がいるという安心感、さらに無理のない希望の範囲内で家を借りられる上に、24時間見守りシステム、買い物や通院などの周辺地域へのモビリティサービス付き。安定して生活していけるよう、悠々会が必要な行政の制度や、しかるべき支援団体やサポートを紹介するので、入居後の日常生活の不安や不便も軽減されるでしょう。

この見守りサービスやモビリティサービス利用にあたって、入居者が家賃以外に追加費用を負担することはないそう。オーナーから月3万円~4万円で借りて、家賃5万円で入居を希望する人に貸し出します。差額の平均1万5000円ほどが悠々会の収益で、見守りなどのサービス提供費用や人件費に充てられる仕組みです。

引越しや入居後の生活支援や見守りなど、必要とする支援がセットになった悠々会の居住支援(資料提供/悠々会)

サービス利用者の年齢は、20代~90代と幅広く、高齢者以外にも精神疾患のある人や発達障がいのある人などさまざま。それぞれに必要なサポートは異なります。何らかの介護やケアが必要となったら、適した施設を紹介することも可能です。

「ただ、あんしん住宅事業のモットーは『自己選択、自己決定』です。ご本人に自分の希望する暮らしに合った住まいを選んで決めてもらいます。あんしん住宅は、入居者が亡くなるまでずっと住んでいただいてもいいですし、グループ内の特別養護老人ホームを入居先の候補として選んでいただくことも、もちろんできます。そしてほかの会社が運営する施設に移ることも可能です」

周囲の理解、資金……困難を乗り越えながら、社会福祉法人としての使命感で走り続けた

あんしん住宅事業を始めた当初は、不動産会社やオーナーの事業への理解を得られず、高齢者や精神疾患のある人の受け入れはなかなか進みませんでした。

悠々会は法人として宅建業の資格を持っていないため、不動産会社やオーナーの理解と協力が必要です。住まい探しは、利用者と一緒に不動産会社を訪ね、諸条件を交渉するスタイル。不動産会社がNOと言えば、先にはつながりません。今でこそ賃貸物件のオーナーから直接「部屋が空いたので、借りてくれないか」という話もありますが、実績ができるまでには多くの苦労もあったようです。

「実績を積みながら皆さんにこの仕組みや意義を説明していくのは大変でした。大家さんや不動産会社と直接話をしても『貸す意味がわからない』とはっきり言われたこともあります」

ところが今となっては、そのように断られた不動産会社との関係が一番太く強くなり、多くの人が入居した後も大きなトラブルは起こっていないとのこと。現在、約20社の不動産会社とのつながりができ、鶴川エリア全体の物件を網羅して探せるようになったそうです。

「今後ますます空き家が増え、高齢者世帯が市の世帯数の半分以上を占めるようになるでしょう。私たちが、オーナーさんにとってのお客さまとなる入居希望者をお連れすれば空室が減り、サブリースという形を取ることで大家さんにとってのリスクが減ります。WIN-WINの関係が築けるのです」

住まい探しだけでなく、入居後の生活支援や万が一のときの死後事務委任などのサービスも提供する。障がいのある人や高齢者の見守りを行うことで、思わぬ事故や病気からの孤立死による特殊清掃の発生といったオーナーの不安を減らすことができる(画像提供/悠々会)

住まい探しだけでなく、入居後の生活支援や万が一のときの死後事務委任などのサービスも提供する。障がいのある人や高齢者の見守りを行うことで、思わぬ事故や病気からの孤立死による特殊清掃の発生といったオーナーの不安を減らすことができる(画像提供/悠々会)

ただし、この事業にはリスクも伴います。
オーナーへの家賃を支払うのは悠々会なので、オーナーのリスクは減りますが、悠々会への家賃を払う相談者には、日々の暮らしに困っている人も多い状況です。悠々会にとっては家賃滞納などの恐れのある事業であることは間違いありません。

しかし、悠々会では困っている人を広く支援するために、サブリースに際して家賃保証会社を利用せず、入居者の連帯保証人や緊急連絡先も必要としていないそう。

「本人に支払う意欲はあっても、この先、本当に払っていけるか微妙なラインの人もいます。これまでも社会福祉法人として、私たちが手助けしなければ、との思いからリスク度外視で支援することもありました。家賃を継続して払っていただけるように、支援団体や行政と協力して入居者の生活を安定させていくのが私たちの役目です」

現在は事業を始めて9年目。3年ほど前からは黒字に転じましたが「ここまで続けてこられたのは、経営母体である悠々会の他事業部門の支えや国の助成金があったから」だと鯨井さんはこれまでを振り返ります。

事業を拡大し、外出が困難な人へのライドシェア事業など、未来に向けた展望も

悠々会は「まだまだ困っている人はたくさんいる」と、居住支援の事業エリアを新たに神奈川県の川崎でも展開する予定です。とはいえ、介護事業などを通じて長く地域に関わってきた地元・鶴川と違い、新たな地で不動産会社や高齢者福祉施設、近隣の事業者との関係を一からつくり上げなくてはなりません。

さらなる課題は、人の問題です。
共生社会推進室で居住支援事業に携わる職員は2024年12月現在、非常勤2名、常勤2名の4名のみで100名以上の利用者に対応しています。今後さらに増えていくことが予想されるなか、スタッフの増員も考えていかなくてはなりません。しかし、居住支援コーディネーターは、それぞれの問題を抱えた相談者に適切なサポートを結びつけていくのが仕事。誰でも務まるわけではなく、知識や経験が求められます。人を育てつつ事業として成り立たせるためには、収益とのバランスも必要です。

それでも鯨井さんたちの支援に向ける熱意はとどまることを知らず、「死後事務委任、身元保証、預託金の部分なども事業として確立していきたい」と展望を語ります。 町田市内には公共交通空白地域もあるため、外出困難者の支援のためのライドシェアについても町田市と計画中です。

ライドシェアを運用するためのアプリ開発や、スマホ使いこなすための高齢者への教室など、鯨井さんたちのさまざまなアイデアが実際に動き出している(画像提供/悠々会)

ライドシェアを運用するためのアプリ開発や、スマホ使いこなすための高齢者への教室など、鯨井さんたちのさまざまなアイデアが実際に動き出している(画像提供/悠々会)

居住支援と福祉的生活支援を結びつけた「あんしん住宅事業」は、他の社会福祉法人との差別化につながり、悠々会のスタッフ募集時には、包括的な支援に興味のある新卒からの応募が増えるという、思わぬ効果ももたらしているとか。人手不足に悩むことの多い介護事業者としては嬉しい副産物です。

「企業であれば難しいことも、社会福祉法人だからこそできることがあるはず」という鯨井さんの言葉に、福祉的支援と居住支援という境目がなくなり、必要としている人に必要な支援を届けられる可能性を感じました。さらに多くの地域でこのような事業が展開・継続され、住まいに困る人たちが一人でも多く、自分の望む暮らしを手に入れられることを願います。